プロジェクトストーリー 挑戦するDNA~銀座編

契機
大規模再開発による更なる低炭素化への挑戦

  • 世界に誇れる銀座の街の環境を守る

    日本を代表する商業エリア・銀座のメインストリート、中央通り。銀座5・6丁目地区は大規模なデパートや世界的なブランドショップが並ぶ一画にある。1987年、銀座の街の都市環境向上を目指して地域熱供給が導入された。導入の契機となったのは、温浴施設の老朽化による建替えだ。その際に「電気式の蓄熱式ヒートポンプシステム」を採用した熱供給プラント(第1プラント)が設置され、周囲の地下鉄駅舎、店舗、オフィスビルを供給先として、冷暖房用の熱(冷水・温水)の供給が開始された。 東京都市サービス㈱では、自社のノウハウと技術でこの「電気式の蓄熱式ヒートポンプシステム」をきめ細かく運用し、当該地区の総合効率(COP)=1.00という高効率なエネルギー利用を実現してきた。銀座の街の環境向上に大きく貢献したいという東京都市サービス㈱の強い想いは、供給開始後30年が経過しても変わらずにある。

  • 外観写真

  • 断面図

  • ワールドクラスクオリティの商業施設「GINZA SIX」
    の開発を契機に

    銀座5・6丁目地区では、2003年頃から松坂屋銀座店エリアの再開発が動き出し、2011年には都市計画決定がなされ、松坂屋銀座店の敷地を含む2街区を一体的に再開発整備することが決まった。
    GINZA SIXの延床面積は148,700㎡。「Life At Its Best 最高に満たされた暮らし」をコンセプトに施設づくりを進めるとともに、地域貢献として、①国際的な商業・観光拠点の形成、②安全で快適な交通・歩行者ネットワークの拡充、③防災性・防災支援機能の向上、④緑と潤いの創出と環境負荷の低減の4点を高いレベルで提供できる開発が目指された。
    特に「④緑と潤いの創出と環境負荷の低減」については、2,200㎡の屋上緑化によってヒートアイランド現象の緩和を図るとともに、高効率な地域熱供給施設の導入によって、CO2排出量の削減に貢献することなどの対策が盛り込まれた。

  • 銀座の街に相応しい熱供給システムの構築

    これまでの第1プラントのみでは供給能力が不足することは自明であった。そのため、GINZA SIXに第2プラントを設置し、第1プラントと連携させて、地区全体で25%のCOP向上を図る計画を提示した。東京都市サービス㈱では、他地区で既にプラント連携の実績があり、ノウハウもあった。
    第2プラントでは、蓄熱槽を6,000㎥という大容量なものにした。地区全体の熱需要が少ない時期は、なるべく第2プラントの効率の良い熱源機器を優先稼働させ、熱需要が大きくなると、第1プラントの蓄熱槽や効率がよい熱源機器を順次稼働させていくことで、高効率化を図る。目標とする地区全体のCOPは、全国でもトップクラスの1.25に定められた。

  • 水熱源ヒートポンプ

実現
第1プラントに隣接した地の利を生かしたプラントの最適運用を探る

  • 発想の転換~建設工法に合わせたプラント建設~

    一般的な建設工事は地下の最下層から躯体を構築していくが、今回のGINZA SIXは、1階床を先行して構築し、その後、地上階と地下階を同時に施工していく逆打工法が採用された。
    このため、「最下階(地下6階)プラント機械室の工事が最後になってしまうことから、建物の竣工に間に合うように建物側の関係者と幾度となく協議を重ね、プラント建設工事の期間短縮化の方法を探りました。通常は床ができてから熱源機器を設置し、次に配管、そして、上の階のフロアもつくっていくという工事になるのですが、今回は、地下6階の床ができ上がる前に、主要配管の吊り込みを先行して実施することにしました。」(技術・開発部副部長。)床がまだ完成していないのなら先にでき上がる天井側から施工していこうという発想の転換である。その他にも、ポンプ・配管類はユニット化して搬入することで現場での手間を省略化したり、さまざまな点においてGINZA SIX側と協力し合い、大幅な工期短縮を達成することができた。

  • 建設中の状況

    技術・開発部副部長

  • エリアサービス事業部東京第1支店営業グループ
    グループリーダー

  • 防災性能向上のために~環境面以外の地域貢献~

    GINZA SIXは「③防災性・防災支援機能の向上」という目標もあって、耐震安全性能分類でⅠ類(官庁施設の総合耐震計画基準および同解説)と同等の構造体耐震安全性能を有し、災害発生時の帰宅困難者受入施設になっている。非常災害発生時には、最大3,000人の帰宅困難者の一時受入を実施するほか、観光案内所を活用した情報提供も行ない、地域全体の防災機能向上に寄与する計画だ。その使用電力にも対応できるように、非常用発電設備も設置している。
    そうした地域の防災支援機能として、東京都市サービス㈱も協力を申し出た。「第2プラントは、6,000㎥の蓄熱槽があり、平常時には冷暖房用の熱源として使用していますが、非常災害時にはコミュニティタンクとして雑用水に利用する協定を建物管理者と結んでおり、断水時にはトイレの洗浄水に活用することが可能となっています。」(エリアサービス事業部東京第1支店営業グループリーダー。以下、営業GL)非常災害時には、暑さ寒さをしのぐ空調も重要な要素だが、水の確保も大切な要素だ。東京都市サービス㈱は、第2プラントの建設により、地域の災害発生時の対応にも貢献することができている。

  • プラント連携による高効率化~高い目標に向けて続く
    試行錯誤~

    GINZA SIXは2017年4月にオープンを迎えた。熱供給も同時にスタートしている。「第1プラントだけの時代には、冬でも毎日、冷水の需要がある地下鉄駅が供給先になっていることで、平日には熱需要が多いオフィスの暖房用の温水製造時の熱回収で、効率良い冷水供給ができていました。」(銀座5・6丁目地区熱供給センター所長。以下、所長)「GINZA SIXさまの加入で、土・日も含めビルの排熱回収がより効率よくできる組み合わせとなりました。地域熱供給のあり方としては、理想的な形だと思います。」(技術・開発部副部長)元々高効率な熱供給を行ってきたところに、今回、GINZA SIXという商業施設とオフィスの大規模な熱需要が加わり、土・日の熱需要の割合も増えたことで、これまで以上に熱需要(冷水・温水)の組み合わせのバランスがよくなった。様々な建物用途の組み合わせでエネルギーを無駄なく活用し、環境性にも寄与する。これこそ地域熱供給ならではの特徴だ。
    「全てのお客さまのために、まずは安定供給を維持していくことが命題です。質のいい冷水と温水の供給に努めていき、その上で効率向上を目指していく。現場の人間としてはそれに尽きます。両プラントの運用方法、各熱源設備の上手な組み合わせについて工夫や試行錯誤を重ねています。」(所長。)2つのプラント連携の工事は2018年3月に完了した。目標とするCOP1.25を10%以上上回る1.38(2017年11月~2018年10月)を達成し、更なる銀座の低炭素まちづくりが推進されていく。
    「GINZA SIXさまは、東京を代表する国際的な街「銀座」における商業施設、オフィス、文化・交流施設として、新たな磁力となることを目指されています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、さらに観光などで人々が集中してきます。当社も、環境にやさしい熱を安定して供給することにより、空調分野で、世界中から訪れる来街者の快適性向上に大きく貢献するとともに、世界に誇れる銀座の低炭素な街づくりに貢献していきたいと考えています。」(営業GL)

    インタビュアー:旭出版企画 藤 繁和さま

  • 銀座5・6丁目地区熱供給センター所長

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