プロジェクトストーリー 挑戦するDNA~当麻編

進出
産業分野への新たな挑戦

  • 工場の新設

    ものづくりを行なう企業において、自社製品の需要が高まれば、生産能力の拡充は必須であり、新工場の建設はその1つの方法である。
    日本トップクラスの充実した最新設備で、セブンイレブン向けの調理パン、スイーツ、惣菜、サラダ、軽食の5分野の商品を24時間365日安定して製造・販売しているプライムデリカ㈱も、工場を新築することを決めた。
    同社が新工場建設に選んだ土地は、本社と相模原第一工場がある神奈川県相模原市。2014年に同社新工場「相模原第二工場」の建設が決定した。

  • 相模原第二工場

  • 当麻地区再開発前の様子

    当麻地区エネルギーセンター

  • お客さまに添った総合エネルギーサービスの提案

    相模原市は、政令指定都市への移行に伴い、産業用地の開発を進め、企業を誘致する一方で、各インフラ企業との調整も同時並行で行なっていた。そうした中で、東京電力㈱(現・東京電力エナジーパートナー㈱)と東京都市サービス㈱は、豊かな自然を有した当麻地区の未利用エネルギー(豊富な地下水による地中熱)に着目した。そして、未利用エネルギーを活用したエネルギーシステムについて興味を示したのがプライムデリカ㈱だった。同社に提案したのは、新工場の近傍にエネルギーセンター(以下、EC)を設置して、必要なエネルギーを供給する総合エネルギーサービス。お客さまに代わってECを設けて熱源設備を保有すると共に、運用・メンテナンス等の維持管理から原燃料の調達までワンストップで実施し、効率よく安定して熱や電力を供給する。同サービス実現に向け、プライムデリカ㈱と東京都市サービス㈱は、協議を進めていくこととなった。

  • 未体験分野におけるエネルギー利用の実態調査

    東京都市サービス㈱にとって産業分野は未体験の分野であった。その中でまず、お客さまのニーズに最適なサービスを提供するために、エネルギーの利用実態の調査を行った。プライムデリカ㈱の既存工場を訪問し、工場内で使用されている設備の実態把握とエネルギー利用に関するヒアリング調査を実施。調査項目は多岐に、詳細に亘った。
    調査の結果、工場の生産工程において、東京都市サービス㈱が持つ空調用の熱源システムの知見が活かせる可能性を見出した。東京都市サービス㈱持ち前の挑戦するDNAを発揮してエネルギー使用量の想定を行ない、熱源システムの検討を進めた。工場近傍にECを建設して、生産プロセスで使用する冷水、蒸気、そして非常時に、新工場とECに72時間電力の供給を可能とする形を軸に、エネルギーシステムの設計がスタートした。未体験分野の設計でも、これまで熱供給で培ってきたエネルギーに関する豊富な経験と技術が生かされていった。

  • 非常用発電機

解決
未体験の分野を切り拓いていく解決力

  • ガス焚蒸気ボイラー

    トータルエネルギーサービス事業部
    ソリューション技術グループリーダー

  • 先読み工事と周辺への環境防災も考えて

    ECと新工場は、道路1本を隔てた隣地に位置していたが、ECの敷地は宅地にも隣接しており周辺住宅への環境影響を考慮し、騒音や振動を発する設備は可能な限り住宅から遠方に設置したり、防音壁の中に納めるなどの工夫をした。
    また、エネルギー供給にあたっては、敷地を隔てる道路の下に導管を通す必要があったが、当時は区画整理組合が所有する道路であり、そうした道路の占用は先例がなかった。何度も協議を重ねることで、舗装工事が始まる前に導管敷設を先行して行なうことが出来た。
    2016年2月にスタートしたEC建設工事は、エネルギーシステムは高効率でシンプルな機能とし、施工方法を含めコストダウンを徹底して行った。熱源設備などは工場の需要に対応するのに必要な台数+1台(n+1台)を原則とし、万が一の際やメンテナンス時にもエネルギー供給を途絶えさせないよう安定供給を最優先した設備構成とした。「ECの建屋が立ち上がってきた時期に、供給する蒸気量の追加の要請がありましたが、ボイラー1台分の予備スペースを確保していたので、そちらに設置する事で対応することができました」(ソリューション技術グループリーダー。以下、技術GL)。非常用発電設備は工場の系統電力が途絶えた際に生産した商品が出荷できる容量を確保すると共に、地域防災への貢献も考慮し、非常時に周辺住民の方々も使用できる取り出し口を設けた。「近所の調整池の広場など、災害時等に待機場所として使用する事があった場合、例えば延長コードドラムなどで電源を持っていく事も可能。」(ソリューション営業グループリーダー。以下、営業GL)。さらには、非常時に井水を周辺地域に提供可能な整備も施されている。

  • 綿密な運転調整の実施

    2017年2月、新工場が操業開始。ECもそれに先行して2016年12月に竣工し、仮供給を開始していた。プライムデリカ㈱の設備工事後、スムーズに稼動出来るように、蒸気導管の温度状態を保つ為、試運転時から24時間の供給が求められるなど、生産プロセス向けの蒸気供給ならではの初体験も多かった。「非常用発電機からの電気も実機でテストしたいというご要望に応えて実負荷をかけて運転しましたので、非常時にもきちんと電気が供給されることを実感いただきました」(技術GL)。
    その後、新工場の操業にあわせて本供給を開始。この案件は東京都市サービス㈱にとって初めて尽くしのプロジェクトとなったが、「エネルギーのプロ」として真摯に向かい合い、無事に迎えた本供給であった。
    蒸気供給がメインの供給において、供給開始後1年の総合効率(COP)は0.9以上という高い効率を維持している。「これからもお客さまのエネルギー利用状況の把握に努め、エネルギー利用方法について改善提案をすることで、お互いが現状以上にWin-Winの成果を出せるように、更なる効率化を目指していきたい」(営業GL)。

  • トータルエネルギーサービス事業部
    ソリューション営業グループリーダー

  • 24時間365日工場のエネルギー面をサポート

  • 産業分野での貢献の拡大を目指して

    プライムデリカ㈱には、この総合エネルギーサービス採用によって、
    ①貴重な敷地を商品生産のために最大限活用が可能になった。
    ②24時間365日操業する工場の安定的なエネルギー使用の維持管理面で大幅な省力化を図ることが出来た。
    ③冷水製造の省エネ率は30%(約20%のCO₂削減)に達する予定で、同社の環境配慮の方針に貢献出来た。
    「工場は常に成長、変化していくため、既存工場においても、お客さまが生産能力増強対応を重ねていく中でスペース不足が起きる可能性は高いと思います。当社の総合エネルギーサービスは、ECの外部化だけでなく、お客さま工場内の冷凍設備等の見直し・集約化を行なうことで省スペース化や省エネ化を図ることも可能です。そのためにも、まず新工場「相模原第二工場」でお客さまに大きく貢献し、実績を積んでいくことが大事と考えています」(営業GL)。
    東京都市サービス㈱は、今後もプライムデリカ㈱との関係を大事に積上げながら総合エネルギーサービスで産業分野における新しい挑戦を広げていく。

    インタビュアー:旭出版企画 藤 繁和さま

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